モニタの隅の小さなデジタル数字がゼロを四つ並べた。
この部屋には他に時刻を示すものは何もない、外の様子も分からない。
だからこの小さく無機質な白い光だけが彼に時間の経過を教えてくれる。
これでもう三日寝ていない。

彼、森田忍は、血の繋がった兄の血の繋がっているとは思えない所業のせいで、カナダにあるルーカス・デジタルアーツのスタジオに監禁されていた。
パソコンディスプレイの前に無理矢理座らされ、縛られ、眠らず、ろくな食事も食べず、モニタ上の幾何学と格闘している。

目の奧の鈍く重い痛みが思考力を鈍らせる。
顔をしかめて目を強く閉じる。
一瞬訪れる彼のまぶたの中の暗い混沌に、光の残像が見えた。

『光に向かって進んでゆくんだ』

「父さん…」
彼は光の名を呼んだ。
今はもう、手を伸ばしてもけして届かない、その小さな光の名を。
2006.10.14 Sat l ハチミツとクローバー l COM(0) TB(0) l top ▲

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