時計は夜の10時をさしていた。
僕は自室のベッドの上で携帯電話のディスプレイを開く。
着信履歴の中の彼の名前にカーソルを合わせる。
ふと手が止まる。

彼はもう寝ているだろうか?
それとも緊張で―

躊躇っているうちに手の中から聞き慣れたメロディーが流れ出す。
彼からだ。
全く君ってやつは…これは一体どんなやらせだい?
僕を驚かすのが君の趣味だとしたら、その性癖は是非改めてもらいたいね。

「よお。悪いな、寝てたか?」
「いや、起きていたよ。何しろ僕は一足お先に自由の身となったわけだからね。詰んでいた本を消化していたところだ。」
少し、嘘をついた。
「ちっ。」
彼が舌打ちのポーズをとる。
本気じゃないことは電話越しでもわかる。
「こんな苦痛を長く味わうことになるなら俺もお前と同じ学校を選べばよかったぜ。」
僕は自分の顔が緩むのを自覚する。
「僕も君と同じ高校に行けたらよかったと思うよ。だがキョン、現実的に言ってそれを実現するには君の学習時間は些か少なかったように僕は思うのだが。」
彼のお得意の溜息が電話口で僕の耳をくすぐる。
「おいおい自信を喪失させるようなことをよくも平気で言えるな。明日が受験日のデリケートな俺にさ。」
「くっくっ、すまない。ところでそのデリケートな受験生がこんな時間に何の用だい?」
「ああ、それが―」

少し間があく。
僕は君との間に流れる心地よい沈黙にただ身を委ねる。

「―すまん、なんだか落ち着かなくてな。ほら、昨日まではお前と塾帰りに雑談するのが恒例だっただろ。今日はそれがなかったからどうも座りが悪くてな。気が付いたらお前の声が聞きたくなっていて通話ボタンを押してた。」

僕は改めて彼に呆れた。
と同時に笑いが込み上げて来た。

「くっくっ、キョン、全く君は…」
全く君はなんて正直で鈍感なんだろう。
それがどれほど僕を魅了しているか君は分かって…ないんだろうね。

「よく考えると用もないのに夜分に悪かったな。まあ俺なりにテンパってたんだと思って許してくれ。」
ばつの悪そうな声で彼が言う。
「いや、僕は一向に構わないよ。僕の声は君の精神安定剤になれたのかな?」
「ん?ああ、いつもと変わらないお前と話してたら、緊張してる俺が馬鹿みたいに思えてきた。」
「そうかい、それはよかった。」
「んじゃ、悪かったな。また学校で。」
「今日はもう寝たまえ。試験中に寝てはお話にならない。おやすみ。」
「ああそうだな。おやすみ。」
そして彼の声は夜の沈黙に飲み込まれていった。

僕は携帯電話を抱きしめてベッドにもぐった。
くっくっ、キョン、君は間違っているよ。
僕がいつもと変わらないだって?
こんなに全身が熱いというのに。
いつもと変わらないのは君の方じゃないか。
いつも変わらない君は、いつもと変わらない君で明日を迎えるだろう。
受験当日はそれが一番大事だよ。
君にもきっと―

サクラサク。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
突然ですが受験生支援ってことで久しぶりにSS書いちゃいました…。
ハルヒ佐々キョンです。
(ついでに初めて某所に投下してきちゃったよ!未熟ですがお手柔らかに…)

受験生のみなさん頑張って下さいね(´ω`)ノシ
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2008.01.20 Sun l 同人活動(ハルヒ) l COM(2) TB(0) l top ▲

コメント

キットカッ(ry
「管理人のみ閲覧可」でしたので具体的には書きませんが…

今までの努力が実を結ぶよう頑張ってくださいませ(´ω`)ノ
またコメントいただけるのをお待ちしております!
2008.01.21 Mon l くるみ(管理人). URL l 編集
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008.01.20 Sun l . l 編集

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